「エロイカより愛をこめて」 精度、スピード。そして、パワー。


コルト・アナコンダ
、前日に撃ったS&W・M627PCと寸法的にはそれほど変わらない。銃身の形状こそ同社のパイソン.357を模してはいるが、そのメカニズムとフレーム寸法は同社のキングコブラの拡大版だ。M627やM15、後に撃ったパイソン等と同様に、トリガーを引くだけでハンマーが起きシリンダーが回るダブルアクション(そう、今でも勘違いしてる人が多いよなあ、“1発ごとにゲキテツ起こすんでしょ?”って)だ。
ウィンチェスター製の.44マグナム弾(結構重い)を、大きなシリンダーに6発装填し、シリンダーを静かに閉じる。
ここでカッコつけて、手首のスナップきかせ、片手で振って勢いよく“ガシャッ”と閉じるバカがいるが、あれはシリンダーの回転軸の変形、シリンダーストップ破損など銃の負担となるだけで、
百害あって一理無しのシロウトの見本なので絶対にやってはいけない。
考えてみるといい、フレームにシリンダーの様な重量物をガツンとぶつけ続けてたら、そりゃ銃の寿命も縮むわ!
プラ製のモデルガン等でも、やってるうちにフレーム等各部のガタが著しくなってくるのでやってはいけない。画的にはいかにもプロっぽく見えるけどな!

最初はハンマーを起こしてシングルで、両手で撃つ。右手に添えた左手をグッと引きつけ、15メーター先のマン・シルエットの中心を狙う。
ドガン!
グアムの大気を震わせ、一瞬炎がきらめく。手のひらから肘、肩にかけて一直線に反動が突き抜ける。他のハンドガンよりも跳ね上がる銃口――そして一瞬の虚脱。
更にシングルで、ダブルで撃ちつづけるが、やはり.38スペシャルや9mm、.45オート、.357マグナム程のペースでは撃てない。慎重に狙って、というのもあるが、跳ね上がりが大きく発射位置にリカバリーしにくいのと、やはり撃ちながら反動にビビリが入ってるのだ。
それでも、20発ほど(左手に持ち替えたりしながら)撃つうちに、片手でも十分撃てそうだ、という感触を掴む。右手でしっかり握り、左手でハンマーを起こす。腕をすっと伸ばし、シルエットを狙い、トリガーに指をかけ――軽く引く。
ドガン!
右腕は蹴飛ばされたように更に跳ね上がる。しかし手首、肘、肩の関節が適度に曲がり、確かに厳しいが反動を受け止める事はできた。誰だ、骨折だの脱臼だの言った奴は――。
少佐の世界に近づけた! そう思った瞬間だった。

ダブルでもシングルでも片手撃ちは出来た。大体は黒円の8〜10点圏内に収まっていたし、多少それたのもあったが、ターゲット自体からそれた弾痕不明は無い。
しかし、これを実戦で使いこなすのは難しいだろう。少佐はなぜ、この強烈な反動を知りながらも、実戦で使おうと考えたのか――!?
(続く)