「シティーハンター」の新作劇場版で、手首のスナップきかせてシリンダーを閉じるのがNGになったと聞いた。
素晴らしい、絶対に観に行こう。
確かにあのアクションは一見カッコイイんだけど、プロっぽいかと問われれば
「ド素人丸出しのロクでもない行為」
でしかないわけで。
本格的にトイガン趣味に首を突っ込んだ時期、銃の扱いの手本といえば――読み込んでボロボロになっていた「モデルガン大百科」と、TVの「もっとあぶない刑事」「ゴリラ」あたりだった。
「モデルガン大百科」では「人に向けるな」とか「トリガーに指をかけるな」とかは書いていたけれど……シリンダーの正しい閉じ方までは書いてなかった。
だから、タカ/伊達やユージみたいに手首のスナップでカッコつけてシリンダーを「片手で振り込み」しては悦に入っていたのだけど――当時の愛銃、コクサイのM10 3in(いわゆるFBIスペシャル)が早々にガタガタになったのはそれが原因であろう。
さて、古本屋で「Gun」誌等のバックナンバーを手に入れていくわけだが、こういう記事を見つける事になる。
月刊「Gun」1978年6月号
第1特集「カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール」イチロー・ナガタ
イーチによるCHPアカデミーの訓練風景レポートだが、武器指導担当の責任者であるSgt.ボブ・マックウォーターから、前年9月から使用弾が.38スペシャルの強装弾に統一され、銃もS&W・M67/M68コンバットマスターピース(Kフレーム.38スペシャルのステンレスモデルだ)を支給される様になったことが説明される。
特にM68はCHP特注モデルで当時600丁しかなかったという(外見的にはM66コンバットマグナムの6inに近い、というより当時まだM66に6inは無かったらしい)。
ともかく、ボブ・マックウォーター氏はM67の4inや、その6in版であるM68を受け取った訓練生たちを指導していく。(以下抜粋。太字の強調は杉村)
「ヨォーシ! みんないいか。今から、ハンドガンの取り扱い方を教えてやる」
と、ボブがどなりはじめた。
「今、みんなが持っているGUNは、S&Wのステンレス・リボルバーで、短いのが4インチ、長いのが6インチ・バレルだ。
たまには油をくれてやりたくなるだろうが、このGUNはサビないのでその必要はない。また、内部に対しても6か月に一度ばかり、ホンの1~2滴たらしてやれば良いのだから、この学校に居る間は全く手入れの必要はない。GUNを他人から渡されたとき、それが空だと分かっていたにしろ、必ずシリンダーをオープンして、タマの有無を確かめること。それをやらない奴はオタンチン野郎のゴクツブシだと思え!
それから、シリンダーを閉じるときに、カッコつけやがって、片手でふりながらバチンとやるバカがいるが、あれは牛のクソ(ものすごく悪い言葉)のやることで、これはなるべく静かに閉じてもらいたい。リボルバーは丈夫なGUNだが、こればかりは君のGUNを早々に痛める事になる。
リボルバーというものは、ダブル・アクションで撃つものだから、いちいちハンマーをコックするなんて、まどろっこしいことをしてもらっては困る。しかし、はじめからダブルでやれと言っても難しいだろうから、はじめの4回まではシングルで撃って、君のGUNに慣れてもらう。
しかし、その後はすべてダブル、試験もダブル、実戦もダブルだ。分かったな!」
と、ボブは強い調子でたたきこむように教え、重要なことに関しては、うんと悪い言葉をはさんで、そのことを印象づけるように講義する。
……当時のCHP教官がそうなら、当然その他の――FBIを含む法執行機関のインストラクターや、その訓練方法からきたPPC射撃競技のシューターにとってもそうだろう。
つまり、最近のトレンドどころか、四十年も前から銃器のオーソリティーにとっては
「手首のスナップでシリンダーを閉じる奴はロクデナシだ」
という見解があったわけだ。
恐らく、金子氏にとっては、「シティーハンター」の様なビッグタイトルで、「振って閉じるバカの拡大再生産」が生じるのは避けたかったんだろうなぁ、という気がする。
(明日へ続く)