「エロイカより愛をこめて」〜“鋼鉄の美学とマッチ棒の生えたケーキ

うまいケーキは人生の楽しみだぞ。


前回、ハイパワーを使うことが多い、とは書いたものの、必ずしも一貫してハイパワーを使っていたわけではない。1つのエピソード内、あるいは連続性のあるエピソードで、何故か拳銃が別のものに変わっている、という事もあった。
例えば“No.6 イン・シャー・アッラー”では、最初ワルサーPPKを携行していたが、その後の潜入シーンではH&K・P9Sを使っていた。
更に“No.7 ハレルヤ・エクスプレス”では、ローマへ向かうオリエント急行内でKGBエージェントに向けたのはSIG・P210(多分、時期的にイチロー・ナガタの記事を参考にしたのだろう、少なくともMGCのモデルガンではない)だったが、その直接の続編“No.8 来た 見た 勝った!!”では何故かコルト.45オート(断言はしないが、作画資料のモデルガンは恐らくMGC・GM2でなく国際産業製ではないかと)だった。
……恐らく、メカ類担当のアシスタント氏の好みである程度クルクル変わっていったのではないかな、と思えるのだけど。
思い起こしてみれば、決して過半数を占めているわけではないかもな、ハイパワーの登場エピソードって(印象深く、比較的登場シーンが多いには違いないが)。

印象深い、といえば、比較的登場回数が多く「魔弾の射手」で“使った”ワルサーP5もそうだが、やはり特筆すべきなのは、
“No.4 ギリシアの恋”で使われ、とどめに“No.6 イン・シャー・アッラー”で「“鉄のクラウス”である事を証明」するシーンでその存在を、そして少佐のキャラクターを決定的なものにしたあの拳銃。
そう。AMC.44オートマグである。

作画資料は、グリップや銃身、引いたボルト(遊底)先端など細部の形状から判断して、MGC製モデルガンのスタンダード(手動)仕様だと断言できてしまう、けれど……その作画タッチのために大して気にならない。
ギリシアで、伯爵と部下G(ゲー)の乗ったマセラティ・ボラを追い詰めるKGBエージェントのフェラーリ、そのエンジンルームめがけ「ようし、いい位置だ」。
マグナム弾を叩き込まれストップするフェラーリ、しかし伯爵の操るマセラティは崖下の海中へ……しかし!
「……はなせよ。マグナム弾を片手で撃つ男とは、体のつくりがちがうんだ……」
伯爵のこの台詞が、フェラーリをストップさせた事実と共に「少佐ってすごい!」と、凄まじいアピールとなる。
イランにて、地元暗黒街に潜入しているエージェント“ギェティ(ヤギ)”に、君が本物の少佐だと信じたわけではない、と少佐に.44オートマグを渡しつつ<
「マグナムは力のあるものでなければあつかえない銃だ。うかつに扱えば大怪我したり、命を落とすこともある。
だが、“鉄のクラウス”は、マグナムを片手で撃つ―――」

 
次回「エロイカより愛をこめて」、来週も少佐と冒険につきあってもらう。(来週なの?)