「エロイカより愛をこめて」〜“いつか見た青空はグアムのそれ”

.44マグナムを撃った話はいずれするからねー。

マグナム、といえば元来“ワインの大瓶”を指す。転じて、同口径の弾薬の中でも薬莢(ケース)内の火薬(パウダー:発射薬)量の多い強力な弾薬をマグナム弾薬と称するものの……“マグナム”と称するのには、銃口初速や運動エネルギー、口径、弾頭(ブレット)の種類など……特に明確な基準は無い。

例えば、火薬量を減らしたスカスカヘロヘロな状態の.44マグナム弾でも.44マグナム弾薬には違いない。
また、.38スペシャル弾薬の薬莢に火薬量を増量して詰めたり、弾頭もAP(アーマーピアシング)だのエクスプローダーだの使ってみても、それはマグナムとは言わない。“.38スペシャル+P(パワー)”なんてのはあるけど。
小口径に分類される.22や.32も、.22WMRや.22ジェットマグナム、.32H&Rマグナムなんてのがある。
あと、.454カスールや.50AEは、マグナムとは名乗っていないがマグナム弾薬のカテゴリーにくくられている。
拳銃弾に限らずライフルやショットガンにだって、マグナム弾薬は存在する。
 
で……。
少佐が使った.44オートマグ、マグナムオートのパイオニアとして銃器史に名を残す存在とはいえ、決して成功作とはいえなかった
1960年代当時、マグナム拳銃といえばリボルバーが普通だったが、オートマティックで撃 て な い か? という事でハリー・サンフォードが設計・開発した.44オートマグ。その特徴としては、
自動小銃じみたロータリーボルト・ロッキング。
自動拳銃としては例を見なかった全ステンレス鋼製。
専用の.44AMP弾薬を、マガジン7発+チェンバー1発装填。
と、当時としてはなかなかチャレンジ精神あふれる拳銃だった! ……ものの、問題は山積みだった。
70年代初頭、AMC(オートマグ・コーポレーション)からリリースされたが、当時はステンレスに向いた潤滑油が無かったうえに、いささか複雑な構造。更にハンドメイドに近い量産性の悪さや、専用弾である.44AMP弾薬はメーカーからなかなか発売されずに、ライフル用弾薬である.308Winの薬莢を加工して作らねばならない煩雑さ&精度のばらつき(→後にレミントン社から発売されたものの、品質がイマイチ)……。かくしてジャム(作動不良)が多発し“オートジャム”などという仇名をいただく始末に。実際のところは、きちんとメンテして、適切な弾薬を装填し、ヘタに反動を逃がさないで撃てばそれほどジャムらない、らしい……。まあ、他のオートより神経質なのは確かな様子だが。
会社自体も倒産と権利移転・再建を繰り返し、AMCに続いてトーマス・オイル社が権利を買い取り、更にそこから独立したTDE社、続いてAMT社で生産されたが、結局1983年に生産終了。後に2000年頃だったか、再生産されるという話もあったが……。 

えーと、どこまで続けようかね?