MGC製 S&W .44マグナム(前編)



同じものを製品化しても、デザイナーのセンスや思想、その時代の要求や技術力などによって全く別のものになっていく。同じものを製品化するなら、当然後発の製品の方がよく練られて素晴らしい仕上がりになっているのは世の常だがー―古くなった製品でも、どこかしら捨てがたいものに仕上がっている。そんな場合が多々ある。例えばモデルガンの場合“タマの飛ばない原寸大模型”というある種の特殊性も作用していようし、実際手にして「振り回して遊ぶ」時のフィーリングというのも重要だろう。それは重量バランスであったり、トリガーの具合だったり、パッと見の各部デザインアレンジの妙だったりする、かも知れない。
あとは――その「時代」の雰囲気を今に伝えてくれるから、とか、ね。

私がMGC製のM29――カタログには、正式には“44マグナム”と表記されていた気がする――を買うかどうか、正確には「叔父に買ってもらうかどうか」を悩んだのはかれこれ20年ほど前、夏休みで静岡に帰っていた時だった。
当時の私のモデルガンコレクションは微々たるもので、確かコクサイのM10・3in“FBIスペシャル”と、MGCの“GM2”コルト・ガバメント、同じくMGCのS&W・M39くらいだったと記憶している。
で、「おもちゃ天国赤春堂」(市内有数のガンショップでもある)の在庫から、MGCリボルバー三種に絞りしばし悩む。コルト・ニューローマン、S&W・M586・4in。それに.44マグナムの6.5inだ。
結局、その時は一番高かったがM586を選んだ。3丁の中で一番再現性が高かったからだ、と思う。というか、M29ならむしろコクサイ製の方がリアルだとか、MGCのは設計古くてリアルじゃない、とかが理由だったように思う。
ただ、それでも心の片隅にいつも引っかかっている存在ではあった。一番の理由は多分警視庁殺人課」の“ミスター”五代警部(菅原文太)だろう。

背中に回したショルダーホルスター、そこから抜かれる“マグナム44”は、まぎれもなくMGCの6.5inだった。
しかし実際に手に入れるならもっとリアルな製品を――とか考えてると、実際いつの間にか購入のチャンスは消えていった。カタログ落ちし、店頭(滅多に行く事はかなわなかったが)からは消え、やがて1994年暮れにMGCは休業する。

このM29を購入したのは確か1999年の……2月か3月、薄曇の空模様(降ってたかも知れない)。大阪某所の“A模型”(現在は廃業した様子)で、だった。この店は確かその前年に“LSプラモガンのある店”として、ネット上で知り合ったある方に紹介され、数回訪れていた。
ホントに古くからの模型店、といった感じの店で、MGCの.44マグナムをショーケースの中で見つけて気になってはいたのだが――購入する決心がついたのは、ちょうどその頃再放送が始まった「俺たちの勲章」だった。


松田優作演ずる中野祐二、その手に握られていたのは、サービスサイズのグリップとグリップアダプター付のM29……今ならなんとか買える! 近鉄と阪急を乗り継いで店へ向かう。

本体5.500円とカート6発1箱700円がついて6.200円+消費税。……で買える筈――勿論値引きを期待していたが、店主さんは「コレいくらだったかなぁ……7.100円だったかな……ウーン、7.000円でいいや
何ですかそれは!? 中途半端なプレミアですか!?(血涙)
カバンの中には古いMGCのカタログ(最期に載ってた頃の“シューティスト89”)が入ってたが、今更それを出すのもなぁ。(続く)