衝撃――「ジェニー83」の記憶

和田慎二氏が亡くなられた。


氏の作品との出会いはなんだったろうか? 「スケバン刑事」をリアルタイムで読んだ世代ではない(TV版はまともに見た記憶が無い。むしろ「セーラー服反逆同盟」のファンだった)。
鈴木光明「少女まんが入門」だったか、MGCのM16E1かかえて「ガンとたわむれ体力増強!」とキャプションのついた写真が印象深い。

きちんとコミックスを揃えたのは「少女鮫」くらいだが……既に手元にないので、もう一度そろえて読みたい。

氏の作品で印象に残っているのは、「まんがアニメック」1号に掲載された「ジェニー83」という作品だ。
巻頭カラーにもかかわらず、作者名がヌケているというとんでもないミスが生じた(当時のアニメック編集部って……)事でも知られるかどうか? こんな作品である。

ある夜、和田氏が馴染みのおもちゃ屋から、ウルトラマンの店頭用等身大モデルを買い取って帰宅するところからはじまる。
肩に担いで自転車こぎこぎ、ところが一人の少女をよけようとして転倒! あわれウルトラマンは壊れてしまう。
和田氏は文句を言おうとして、その少女(というか幼女)のかわいさに思いとどまる。
少女は、おわびにかわりのオモチャを持ってくる、と約束し、頬にキスして去っていくのだった。

数日後、ジェニーと名乗る少女――心なしか少し大きくなったように見える――は、大昔のロボットのプラモデルを持ってくる。コレクター垂涎の一品で、歩きながらミサイル発射できるのだ。
「お父さんのコレクションだろうか? こんな貴重なものをいただくわけには……」
かわりに人形をあげよう、と用意していたが、最初に出会ってから数ヶ月程度しか経っていないのに「やだあ、もう人形遊びする歳じゃないのに」と、逆に笑われる。

ジェニーは、彼の前に姿をあらわすたびに少しずつ成長――あきらかに大人になりつつある!
彼女に惹かれていく和田氏だが「おれはロリコンではない」と、見合い話をすすめてもらおうとする。
それを聞いたジェニーは「ずっと、ずっと追いかけてきたのに」と、プレゼントを置いて去ってしまった。
彼女の持ってきたのは、未開封ブルマァク製品! それを見て愕然とし、そして確信する和田氏。「彼女は、おれを追いかけてきてるんだ、おれの時間を!」

月日は流れ、1983年の9月、ジェニーから国際電話があった。
「海外の大学を卒業して、日本に帰ってくるの。飛行機は――」
「迎えに行くよ!」そしてプロポーズするのだ!
その日の朝――ニュースが流れる。
彼女の乗った便は、サハリン上空で……。

この作品が単行本に収録されているかどうかは知らないが、私にとってかなり印象深い作品である。


個人的には、竹本泉「あおいちゃんパニック!」ミッシィコミックス版のあとがきで語られた「アクション向けツリ目8頭身のあおいちゃん」がすごく見たいのだが。