今週のお題「最近おもしろかった本」東直己大会

ここ数か月、東直己の一連の作品が私の中で再燃している。

元々、映画化されたのをきっかけに、ススキノ探偵――便利屋の“俺”の物語を読むようになった。

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA)

探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA)

以降、ちょこちょこと、早川の「ススキノ探偵」シリーズばかり読んできたが、「駆けてきた少女」が、他のシリーズと合わせないと完結しないことを知り、とりあえず畝原シリーズも読み始めた。

駆けてきた少女―ススキノ探偵シリーズ (ハヤカワ文庫JA)

駆けてきた少女―ススキノ探偵シリーズ (ハヤカワ文庫JA)

待っていた女・渇き (ハルキ文庫)

待っていた女・渇き (ハルキ文庫)

冤罪で職場を追われた元新聞記者、零細ながら探偵として娘を育て(元妻の出てくるような話とか……出ないかなあ)、札幌の暗部に知らず知らず切り込んでいくその姿、真面目に自堕落なススキノの“俺”とは違った方向性に惹かれる。

熾火 (ハルキ文庫)

熾火 (ハルキ文庫)

ところが、三部作のひとつである、“俺”でも畝原でもない別の主人公が活躍する「ススキノ・ハーフボイルド」が手に入らず不完全燃焼気味である。

……それにしても、勤勉ドケチの横山社長とか、その息子の実直ニート・貴とか、やたらキャラ立ちすぎだ。

そして“榊原健三”シリーズ。この健三、特に意味もなく無造作かつ圧倒的に強い! ニンジャソウルに憑依でもされてるのかというくらい強い!

フリージア (ハルキ文庫)

フリージア (ハルキ文庫)

かつての恋人を幸せにするため、カタギになり、そして彼女と別れた元ヒットマンである健三。
山奥に隠遁していた彼は、彼女の生活をおびやかす過去の因縁を根絶やしにするため、彼女の息子の命を守るため、北海道に潜む暗部と戦う!

二作目「残光」において、表だって健三のバックアップに回れない桐原組長とその手下たち。かくて便利屋の“俺”を架空の探偵社社長“持谷”にでっち上げる。
なんたって敵はヤクザと汚職刑事チームの連合軍。その殺人現場の秘密を知っている子供――元恋人の息子・健太を守る健三と、彼と行動を共にする持谷(“俺”)。
“俺”や桐原とは犬猿の仲の桜庭組長が意外と常識人に思えるが――実際のところは、
“日本の腐敗を信じる汚職刑事”青柳と、
ショタコン殺人鬼ヤクザ”門前の、
悪夢の変態コンビがいるからそう見えるだけかも知れない。

三作目「疾走」においては、ススキノ探偵においては駆け出しのチンピラだったブッチョもひとかどの地位になり、若い者に説教したり、結構キチンとモノを考えるオトナになっている。
健太だってシリーズにおいて幼児から小学2年生、そして中学2年生と成長し――時の流れってすごいなぁ。

桐原組の相田が難病に倒れても、依然として組の幹部として確固たる立場にあり、彼を取り巻く環境も結構スゴイと思わせられるけれど……。
映画「探偵はBARにいる」のシリーズが今後続いていくとしたら――実質的には、桐原のポジションは映画だと相田になる気がするので、寝たきり状態で参謀として活躍するのはブッチョになるのかも知れない。さて?

ともかくも、この一連の作品を読んでいくと、書く作品の時系列がどうなってたっけ? とか混乱もするのだけど。
(“俺”と畝原がすれ違う事はあっても具体的な絡みはないし)