「エロイカより愛をこめて」――鋼鉄の男、恐らくポリマー・フレームの銃を厭う。

ちょっと順番は前後するが、6年前のグアム行きで撃った中で、一番気に入ったのはS&W・M15コンバットマスターピースという.38スペシャル弾(9mm×29R)を使うリボルバーだった。
中型のKフレームに、長すぎず短すぎずの4インチ銃身、太すぎず細すぎずのラバーグリップ(現在標準のバトラー・クリークね)、調整可能なリアサイト。ちょっと地味と言えば地味だが、撃った感触はこれが一番よかったように思う。
大雑把に言うと、これのサイトが固定式なのがM10ミリタリー&ポリスで、.357マグナム対応なのがM19コンバットマグナムになる。
コレだけは2箱100発撃ったが――反動はもちろん.22より強いが、十分コントロールできる範囲だ。
手が痛くなることもなく、トリガーの感触も今にして思うと、タナカやコクサイのモデルガンとそっくりである。(逆だバカモノ)派手さは無いが実に素直な銃だった。
そう、たとえるなら、さりげなくお弁当や夜食を用意してくれる、困った時は側にいてくれる“隣の幼なじみ”の様な。(←どんなだよ)ねえ、名雪さん?(違う、名雪違う)
では、少佐の川澄舞SIG・P226はどうだったか?
ひとことで言うなら、「少佐らしい銃」である。
――ルックスといい撃った感触といい、実に愛想が無い。

スイスの設計をドイツで生産した(輸出対策)、という元々の成り立ちがあるSIG・P220系列。私の撃ったのは確か米国法人のSIGアームズ製だが、米軍トライアルで争ったベレッタM92F系列ほどの華やかさは無い。
グリップの上部が妙に太くて、必ずしもホールド感はよいとは思えなかった――が、“確実にタマが出る”という妙な安心感は伝わってきた。
まあ「SIGだからジャムらないと油断したか!」なんて例も無いとは言えないし――あのシーンでヘンリエッタが殴られたのは、殴ると言う行為はさておいても、それだけのヘマをしでかしたのは事実だと思う――しっかり握って反動を受け止めるべし。
さて、9mmパラベラム(9mm×19)弾薬。元々帝政ドイツのパラベラム・ピストル(一般に“ルガーP08”の方が通りがよいか)のタマとして世に出たが、いまやNATOの制式弾薬でもあり、多くの法執行機関や、民間のスポーツ射撃、あるいは自衛用としてあまねく広がっている。P226は、これをグリップ内のマガジン(弾倉)に15発装填する。
当時はクライムビルの関係で、1994年以降10年間は「民間向け新規生産は上限10発まで」と規制されていたが、これは規制前のマガジンだったらしく15発入った。とはいえ最後の1発はかなりスプリングが硬くなり、押し込むのに難儀した。(←これは他のオートでも似たようなものだが)
スライドを閉鎖すると、シャキッと銃身後部のチェンバーに初弾が送り込まれる。こいつの反動はどうだ?
ドンッ と咆え ビシッ と反動がくる。
.22に比べてかなり鋭い、しかし恐れるほどではない。跳ね上がった銃口はすぐに下ろしてターゲットを狙う――あまり強烈な反動だと、この次弾発射までのサイクルが長くなるのだ。
15メーター先のターゲット(各銃ごとに張り替えてます、念のため)に、次々と吸い込まれる9mm弾。黒円に小さな孔がいくつも開く。カチッ あれ? 不発? ……弾切れ? なんでスライドストップが作動しない?
何のことはない、グリップした右手の親指で、スライドストップを押し下げたままだったのだ。そりゃ作動しないわな。機能的にはいい位置なんだけど……。
“チェンバーにプラスワン”はしなかったので、弾倉(もう1本あった)交換して、また詰めなおして……で15×3+5発の50発。
撃った感触としてはシャキンシャキンと“滑らかな作動”には違いないが、本当に愛想が無い。ただし
「確実に作動する」マシンとしての愛着はわきそうだ。一見ツンデレですが、そのうちデレ期に入りますから。ねえ佐祐理さん。「あははーっ」

この銃のフレームはアルミ合金だし(スライドは鋼鉄だけど)、全面マット仕上げだから「磨き抜かれた鋼鉄の色」とはいかないが……現代を戦う少佐の拳銃として、これ以上のものはなかなかないだろう。強いてあげればフレームにレールが追加されたP226R、あるいは1911系列か。ただ単に性能のいいオートというだけなら他にもあろうが「フレームがプラスティックの拳銃は少佐には似合わん」「あまり小型なのは少佐に似合わん」で「イタリア製品は少佐には似合わん」という条件だと、ね。
……どうしよう、.45オートや.357マグナムの前にさっさと.44マグナムやっちゃった方がいいかな? 「メガロ刑事」最終回もまだ残ってるし。(続く)