「エロイカより愛をこめて」――鋼鉄の男、フレームがアルミ合金の銃を握る。

少佐の気分味わうなら、もちろん.44マグナムは撃ちたい。
しかし.44オートマグなぞ望むべくもない。その総生産数は各社合わせてトータルでほんの9千丁程度とも1万3千丁程度とも言われる……たかだかその程度しか生産されなかったコレクターズアイテム。
しかも使用弾薬は、ガンショップへ行けば普通に在庫している(製造メーカーや弾頭等の種類にこだわらなければ)リボルバー用の.44マグナム弾薬ではない。事実上の専用弾であり、ライフル用.308Winの薬莢を加工して自作するのが一般的な.44AMP弾薬なのだ。(確か.44AMPのファクトリー弾はレミントン製、スウェーデンのノーマ社、あとハンドロード向けのスターライン社製薬莢があった様な気が)
観光客向けの射撃場はもちろん、いささか趣味人向けの射撃場にだってあるわけがない。米国のコレクターと仲良くなってお願いする、以外に実物に触れる、撃つ機会はありえないのだ。
単にマグナム・オートマティックというだけなら、デザートイーグル(大抵は.44マグナムか.50AE弾薬)やAMTオートマグIIIを置いてある場合もあるが……。
あ、このオートマグIIIというのは、厳密には拳銃弾でなく.30カービン弾という、ライフル用弾薬(比較的小ぶりだが)を使う代物でー―というか、AMT製のオートマグII(.22WMR)・III・IV(.45ウィン・マグ)・V(.50AE)は、名前はともかく外見的にも内部機構的にも少佐の使ったオートマグとは全くの別物なので、これを撃ったとしても「少佐のマグナム撃ったー!」とはいえないので注意。

で、市街地の事務所で銃を選んで、それら用の弾薬を買う。ホテルロードの射撃場だと、バラで10発とか18発(6連発リボルバー3回分)とか20発とかの単位でタマを渡してくれるが、ここは新品のタマを一箱50発とかの単位で買う。すると(タマの単価の安い.22は別として)銃のレンタル料が1箱に付き1丁分ただになるのだ。そして郊外の射撃場へ行くが、道中コンビニで冷えてないコーラを24本入り1カートン買う。美味しく飲むためではない。

で、私はまず、オーソドックスなスターム・ルガーの.22オートから撃つ事にした。反動の小さい.22口径なら撃ちやすい。射撃に慣れるならまず、これからだろう。
標的は15メーター先、A全くらいの大判のペーパー、人の上半身が描かれたマン・シルエット。
ま、実弾射撃は初めてとはいえ、的からはずしたらカッコ悪いよなぁ。というわけで、あくまで中心を狙ってゆっくり……緊張のあまりなかなかトリガーが引けない。
“そうか、君はまだ実銃を撃ったことはないんだな。その人差し指の動き一つで、圧倒的な威力を発揮する武器をね……”
タンッ

“撃っ……たな……人の形をした……紙のマト…を……”

そうだ――紙の的を――撃ったんだ――!

タンッ タンッ タンッ タンッ タンッ
小さく弾ける反動と共に、宙を舞う真鍮の薬莢。熱っ、眼鏡の隙間から入ってきた。
1箱撃ちつくし、殆どが中心の黒円、直径9cm程度の8〜10点圏に収まっている。完全に的をそれた“弾痕不明”なし!
やりゃあ出来るじゃん、自分。
続けて、9mm口径オートマティック。事務所の在庫から選んだのはSIG・P226。連載再開以後、目下少佐の愛用する、現代コンバット・ハンドガンの傑作のひとつ。これは――続くっ!