マニア様がキテる――「メガロ刑事」(1/11)

いま危険と背中合わせの広域犯罪に命を張って、悪に敢然と立ち向かうメガロ刑事――見城重吾の愛銃マグナム357が火を噴く。
命知らずの広域(メガロ)捜査官、見城重吾の.活躍を、迫力あるタッチで描いたアクション巨編!!

「メガロ刑事(デカ)」作画:田辺節雄/原作:原麻紀夫 秋田漫画文庫 全2巻

初版はそれぞれ昭和60 (1985)年の4月20日、5月20日となっている。出てくる車両が初代CR-XとかスカイラインRS“鉄仮面”、スズキ・カタナ(リトラのIII型) だったりするので、連載(秋田の「プレイコミック」あたりか?)は多分昭和58〜59(1983〜84)年頃、だろう。
端的に言えば「青年誌の暴力刑事劇画」ではあるけれど、なんたって描いてるのは田辺“戦国自衛隊”節雄である。その画力は文句なしの迫力。……つーか「戦国」ばかりがクローズアップされて、あまり他の作品が取り上げられないのはどうかと思うんだが……。
ガンアクションという点でも、望月三起也のアシスタント出身だけあって誇張バリバリで見せ方が上手い。
今時のリアリティ優先の作家とは方向性が異なろうが、そういうのが好きなら読んでおいて損は無いだろう。
私の場合、たまたま十数年前にブックオフで見かけ、迷った挙句買い損ね、暫くたってから2巻、更に1巻を入手した本作。引越し時にしまったまま行方不明なので完全記憶モードだが……。あ、見つかった。 
物語はある夜の横浜からスタートする。

横浜港署の刑事達は、手配中の強盗殺人犯を目前で射殺された。射殺したのは警視庁捜査一課のはみ出し刑事、見城重吾。彼は新宿での強盗殺人を追って、横浜で潜入捜査していたのだ。……だが、潜入捜査で警察手帳も無く、しかも管轄外で、日本警察に支給されるはずの無い.357マグナムで射殺――乱闘の末、見城は逮捕される。挙句に本庁には、査問委員会にかけ免職にする、と通達される。その彼の身柄を引き取りにきたのは警察庁のエリート、江本警視正だった。
彼は同棲中の恋人、篤子の兄であり、見城と妹との関係を苦々しく思う反面、その捜査能力は高く買っていた。
「いまや犯罪は広域化してきている。舞台はいまや一都市などという範囲ではない。メガロポリスが犯罪の舞台なのだ……」

所轄にとらわれず自由な捜査権を持つ反面、他の警官の協力をうけるどころか敵対するかもしれぬ“広域捜査官”としてのスカウトである。「狼は番犬にはなれんと思うがね」
見城に拒否権なぞなかったが、危険な任務であり一応は志願の形が必要なのだ。――そこに緊急連絡が入る。見城が射殺した犯人の相棒が篭城事件を起こしたのだ。見城のアパートで、その恋人を人質にして!
「俺のマグナムを返してくれッ!」
頷く江本。「さっきの返事は?」
「あいつの決着がついてからだッ!!」
既に警官隊に包囲されたアパート、2階から挑発する犯人。恋人の身を案じ飛び出そうとする見城を「デタラメだッ! 犯人の挑発に乗ってはならんッ!!」押し留める江本。しかし銃声1発。凌辱され、散弾を一身に浴びた篤子が窓の外に落下する。
遂に飛び出した見城に、犯人は更に発砲。
「クハハハ、殺った、殺ったぞッ!!」
だが――重傷を負いながら、見城は犯人めがけマグナムを連射する。

落下した犯人の死体に、空になったマグナムのトリガーを引き続ける見城。……やがて力尽き、篤子の亡骸の上に倒れる。
 
治療を受け病院を後にする見城に、江本警視正は問う。
「では、メガロ刑事になるんだな。見城くん?」
「ああ、もう失うものは何もねえ!
 この命だって失ってもおしかねえよ。何でもやるさ」
雑踏に消えていく見城。その背中に向け、呪詛の言葉を呟く江本。
「見城! 楽な死に方はさせんぞ! もっとも危険な捜査に使ってやるぞ!」
(続く)