なんとなく思い出したこと。

特捜最前線」も後期に入ってのエピソード。

巡査部長昇進試験を受けた吉野刑事(誠直也)が、かつて世話になった所轄の老警官のところへ顔を出した。
定年間近である先輩のパトロール中、殺人事件が発生。一流企業の役員が死体で発見された。

老警官は犯人を逃がしてしまうが、その様子に吉野は不審なものを感じる。――「何か見たんじゃないですか」

その老警官を、交番で面罵するのはキャリア組の若い警部補。やむにやまれず仲裁、というより先輩を弁護するあまり、市民の見ている前で、特命課刑事とはいえ巡査長にすぎない吉野が、キャリア組である上司を罵倒した。

結果、所轄の署長が特命捜査課に訪れ、神代課長(二谷英明)に抗議する。
「ここはいい眺めだ(ビルの高層階)、特命課というのはエリート、まるで雲の上の世界ですな。
だからといって、市民注視の中であんな暴言を吐かれるのは困る。なんでしたら、この事件の捜査を特命課でやりますか?」
所轄のヤマに首突っ込むな、と釘を刺しに来た署長だが、神代課長は
「いいでしょう、それでは捜査資料を全部引き渡してください」と言い放つ。狼狽する署長を尻目に特命課が捜査開始する。

被害者は有能なビジネスマンであるが、社内でも敵は多い。容疑者が絞り込めないが、自宅のアルバムに戦友会(終戦からもう四十年、しかしまだ四十年目だ)の写真を見つける。

「主人は二等兵だったので、戦友会が嫌いでした。戦争が終わって何十年たっても、会社で出世しても、昔の上官から呼びつけにされて……」
その集合写真の中には、被害者の元上官――会社での部下の姿があった。

その元上官は、病気の妻を抱えていたので、定年延長を認められるか――働いて稼げるかどうかが大きな悩みだった。

吉野は老警官に問う。どうしてあの時、犯人を追わなかったのか?
老警官は、自分の身につまされるものがあったのだ――被害者と犯人の口論が聞こえていたのだ。

「会社を辞めさせないでください、同じ戦友会の仲間じゃないか」
「上司に言う台詞かね、いいザマですな上等兵殿、ハハハハ」
「……貴様! 上官に向かって何を言うか!」

犯人と同世代で、自分も定年間近。どうしても追えなかったのだ。

定年が伸びた元上官――犯人のオフィスに、逮捕に訪れる特命課刑事たち。
元上官はデスクにしがみつき、他の社員が注視する中で嗚咽する。
「私はまだ働きたいんだ……」

警察を去る老警官。その背を見送って特命課に戻った吉野は、課員の祝福を受ける。
「祝・巡査部長昇進!」
――彼が殉職する約半年前の事である。


記憶が怪しい部分があるが、だいたいこんな感じだった。