マニア様がキテる――「メガロ刑事」(6/10?)

「水沢っ、警官だからとはいわねえが男として汚ねえとは思わねえか!?」 俺はメガロ刑事の見城だッ!
「メガロ!? 広域捜査刑事か!?
見城といやあ、警視庁時代有名なはみだし刑事……あんたがそうかい?」
第8話、新宿で警官の拳銃を奪い、名古屋、横浜、大宮、浜松と広域強盗殺人を繰り広げた犯人。残弾は2発。江本は言う「死体にしてでも逮捕しろ!」。その遺留品のプレスレットがメーカー品で無くかなり特殊な、恐らくは手作りであることを見抜いた見城は、捜査陣の半数をさいても聞き込んでくれと依頼し、捜査の基本と称して新宿の交番へ向かう。
犯人は自宅へ戻り、身支度を整えて出かける。その家に忍び込む男――。
その男――拳銃を奪われた警官、水沢はあるマンションへ向かう。交番から水沢を尾行した見城は、公衆電話でブレスレットの持ち主の報告を聞く。青木孝治……元二輪ライダー」
マンションの一室で愛人・冴子と戯れる青木。そこに拳銃片手に現れる水沢。
「その拳銃はッ!?」「ああ、俺のさ。お前の部屋にあったが……な」
「最初からお前たちはグルだったのかッ!?」
舌を出して笑う冴子。
「花形二輪ライダーだっていうから結婚してもいいと思ったのに……ライダーやめたら、ただのヤキモチ焼きの修理工場のオッチャン、熱がさめちゃったのよネ!」
水沢とグルだった冴子は、青木をそそのかし水沢の拳銃を奪わせ、連続強盗させた。そしてその稼ぎは全て自分達で――。
水沢は逃げようとする青木を射殺し、更に飛び込んできた見城に発砲――しかし外れる。対峙する二人。
「なにしてんの! 撃つのよッ、殺すのよッ!」
「冴子、これまでだ……」絶叫して突進する水沢、その心臓を撃ちぬく見城。
「最後は男としてけじめをつけやがった……が、気にいらねえ! もう弾が入ってないから。俺に自殺の手伝いさせやがってからに!」更に冴子にマグナムを向ける。
「わ……私ッ、私なんにもしてないのよッ!!」ベランダに追い立てられた冴子は、バスタオル一枚の身体を投げ出してでも生き延びようとする。「好きにしていいワ! だから……」
「いいや、可愛いがやはり悪女だよ。二人の男を地獄に落としたんだ……一緒に行ってやれよ。あんたにふさわしい姿でな!」
バスタオルを引き剥がす見城。いきおいバランスを崩し、暗い虚空へ消える冴子――。
 
第9話、江本は見城を横須賀シンジケートの捜査から一時呼び戻し、続発する主婦達の麻薬中毒死事件の捜査に当たらせる。警察庁より更に上からの厳命に加え、マスコミの麻薬追放キャンペーンも理由だが、場合によっては密売犯を射殺しても構わん――と命じる。所轄刑事や麻薬Gメンには出来ない“最後の詰め”をしろ、という事だ。
基礎的な捜査は終わっているが、巧妙に立ち回る密売人は影すら見えない。オーバードーズで死んだ主婦二人を繋ぐ線は、かつてK団地に住んでいた事だけだ。しかしこんな平凡な団地に、どうやって悪魔の薬が持ち込まれたのだ?
――見城の車の側を通り過ぎる一人の主婦。その姿を見た他の主婦達の井戸端会議がはじまるのに気づく。
「太ってたのが急にやせた……目が虚(うつ)ろ……浮気……………。妙に勘にひっかかるぜ!」
その主婦を尾行するが、夕方帰宅するまでに3人の男とホテルに入ったのを確認する。売春に違いないが客を物色した様子は無い。それにシャブとどう繋がるのだ? 張り込みを続ける見城だが、3日間で件の主婦と接触したのは集金人、御用聞き、セールスマン、子供の学校の先生、近所の主婦……それらしい姿は無い。そこに、3日間で見たことのない女が現れた。集音機を使い、室内の会話を盗聴する。主婦の痩せたのはやはり薬のためで、その代償は売春――その女を尾行する見城。
自宅マンションで地味な変装を解き、シャワーを浴びた美女。裸身のままベッドの上で大金を眺めると、哄笑しながら札ビラを撒き散らす。
「ああ………いい匂い! 最高よ、最高だワ〜〜。誰が不幸になろうと死のうと私はこの匂いに生きていくワ。
麻薬なんかいくらでも暴力団が売ってくれる。キャハハハ 売春の相手なんかセールス先の旦那たちがいくらでもいるし。
男なんて、男なんて信じるからよ……・フフ。ククク…」札ビラの上で転げまわる女。
「世迷いごとはそれだけか?」ピッキングで侵入していた見城。女は裸身を隠すより金を隠そうとする。
「警察を呼ぶワ!」「俺がその警察だ!」「!」
団地の女房族にやせるだの疲れがとれるだのと、化粧品セールスに化けてシャブを売りつけた女……「フン! 証拠もないくせに!」
だが先程の世迷い言は録音されていた、そのテープを放り投げる見城。あわててキャッチする女。
「録音テープが遺言だ! 銭の中で死ねて本望だろう!? 現代の吸血鬼(バンパイヤ)めッ!!」
(続く)