マニア様がキテる――「メガロ刑事」(7/11)

「いつ見ても横須賀(このまち)は貧乏たらしく………人間の暗い欲望を刺激する……嫌な町だ!
いや……というよりは、僕にとっては原点ともいう町かな」
第9話、別府行きフェリーから夕日を眺めるアベック。しかし男は人気の無いのを確認すると、突如女を海に突き落とし自分も飛び込む。「船をとめろ〜〜ッ! 人が落ちたぞ〜〜ッ」男は息をこらえながら、助けを求める女を溺れさせる。そして自分のみ浮かび上がり、恋人を失った男を演じた。
その男、浦上は記者会見で追求をうける。あなたは疑惑の渦中にいる――あなたの恋人達はみな、あなたを受取人に指名した多額の保険に加入し、次々に死んでいる。しかも麻薬と密輸の嫌疑があなたにはかかっている……。
「どれだけ疑惑を書きたてられようと、事情聴取も受けていないんです。これだけ優秀な日本の警察が疑ってないんですよ。意味はわかりますね!僕には死神でもとりついているんですかね……」
その姿に怒りの視線を向ける見城。シャブの横須賀シンジケートの運び屋を束ねているお前を突破口にしようと思っていたが……もう我慢できん! またもや女を殺して太るとは!
「ば……ばかをいうな見城! 浦上を逮捕してはならん! な……なにっ!? 不幸な事故が起きる!?」
「シャブの捜査は回り道になっても、あの獣を野放しにしておくのはもう限界です!」
見城は新幹線の車内電話で江本警視正に連絡し、浦上を追って新横浜で降りる。――シヴォレー・カマロに乗り込んだ浦上はやがて自分が尾行されているのに気づき、横須賀へ車を向ける。多分あの野郎だろう……俺を追うブン屋どもとどこか雰囲気が違う。高台に停め、横須賀の夜景を見ながら見城を待つ浦上。
見城は問う。シャブ密輸はともかく、保険金殺人は何故だ? 金には困ってなかったはずだぞ。
浦上は言う。この街の暗い欲望が僕にとり憑いていると! ワルサーを向けて更に続ける。自分は天性の犯罪者だ、殺したいから殺す! 今度の女は運び屋として失敗したから、という名目だが、殺したのはあくまで自分の心の問題だ、君を殺すのは……君は単なる刑事という以上に、自分に殺意を抱いているだろう?
だが見城は指摘する。貴様の銃では急所に当てない限り、俺に反撃のチャンスを与える事になる。しかし同じ9mm口径でも俺の.357マグナムなら、急所を外しても貴様は吹っ飛ぶ。それでも撃つか!
浦上が発砲する――だが横っ飛びした見城は足を撃たれながらも、瞬間的に撃ち返す。腹を撃たれた浦上は吹っ飛ばされ、苦しげに呻く。ああ……もう人間どもの創った掟を合法的に破る快感は味わえないのか……この痛みには耐えられん……。
落ちたワルサーを広い、自分のこめかみに向ける。その右手を撃ち飛ばす見城!
「た……たのむ〜〜ッ、ひ……ひと思いに死なせてくれ〜〜ッ!」
「だめだ! 貴様はゆっくり、死の恐怖、死の痛みを味わうんだ! たった一人で……な!」
(続く)