マニア様がキテる――「メガロ刑事」(8/11)

「規則規則ッ、やれ女はだめギャンブルはだめ……。酒も飲むなだと、ふざけんなッ!
警官だって人間なんだ! 若いただの男なんだ。やりたい事は山ほどあるのに………!
どう生きたって一生だあ、面白おかしくやりてえ!」
第11話「夢幻ライダー」
雨降る深夜の環状道路、バイクで移動中の見城は、別の方角で閃光と続く火炎を見る――。逆走し、白バイに追われながら分岐点へ戻り、火災のあった地点へ向かう。そこには燃える現金輸送車と撃たれた警備員、そしてショットガンを持った犯人。
犯人は見城に向け発砲するが、自ら転倒することで辛うじて逃れる。しかし次の1発で、追ってきた白バイ警官は負傷する。
スズキ・カタナで逃げる犯人に見城もマグナムを向けるが、犯人はバイクのライトを消したために照準できない。
見城は負傷した白バイ警官に事後を任せ、犯人を追う――。ドライブインの前でカタナを発見。「乗り捨てたか、それともまだこのあたりに………?」ドライブインの中に入る。
折しも店内では、暴走族連中が周囲の迷惑顧みず、大音量でラジカセを鳴らし踊り狂っていた。店内の様子を見回すが、犯人らしい姿は見えない。店から出ようとする見城だが、「眼(ガン)とばしといて、そのままいこうってのかあ?」暴走族に因縁をつけられ、無視して出ようとするところに飛んでくるナイフ。見城はニヤリと笑い返す。俺はいま機嫌が悪いんだ、ガキでも容赦しねえぞ? 殴りかかってくるチンピラに.357マグナムを向ける。
「ハハハ、いい年してモデルガン持ってイキがってやがるぜ!!」
銃声一発、マグナム弾で粉砕されるラジカセ。
――そこに入ってくる制服警官。その顔を観察した見城は、おとなしくマグナムを渡す。
店を出る警官と見城だが、警官は見城から次第に距離を開けはじめる。「まさか俺が逃げようとしたとか理由をつけて射殺しようってことはないよな?」動揺する警官に、所属と名を問う。
「答える必要はない!」
「いいや、答える義務があるのさ。なんたって偽警察官ってこともある。 証明しなきゃ騒ぐぜ!」野次馬が注目している。
「神奈川県警……署の倉島巡査長、(警察手帳は)本物だな」だが、連行するのに証拠品のマグナムを突きつけながら手錠もかけず、パトカーも無い。「俺をバイクで連行するつもりか?」
店に来たとき、お前の顔にはフルフェイスヘルメットの跡がはっきり残っていた。それにしてはカッパは着てないし制服も濡れてない、それともトイレで着替えたか? 「連続現金輸送車強奪事件の犯人………倉島!」――俺を殺そうと思わず、バイクを捨てたまま車で逃げるべきだったな。
倉島は制帽を地面に叩きつけ踏みにじる。
「こんな物ッ、くそったれが〜〜ッ!」鬱屈した不満を叫びながら、側の車から現金の袋を取り出すとカタナにくくりつける。「警官なんかで一生を終わってたまるかッ!!」
一瞬の隙を突いて、倉島の手からマグナムを蹴り飛ばす見城。マグナムを拾う間に、倉島はバイクで飛び出していく。
「ヤツはミスった! あの方向から本線に出るには遠回りだ!」反対方向へバイクを走らせる見城。“しようがねえなッ、あの世で使いな!”

第12話「午前2時の蒼いバラ」
新宿の街角。見城は雑踏の中、アタッシュケースを抱えた中年男を観察している。何かに怯えたような――その時、もう一人の男がその側を通り過ぎる。アタッシュケースはその男の手に移り、ナイフで刺された中年男はその場に倒れる。
見城は救急車を呼べと叫び、刺した男を追おうとするが、死に際の言葉と共にコインロッカーのキーを託された。――視線を感じた先には一人の女。
刺した男は、路地でアタッシュケースの中身、ドル紙幣の束を確認する。“持ち逃げなんて手間をかけさせる……よくないね!!”
見城は新宿南署で事情聴取を受け、署を出たところで先程の女に声をかけられる。その車に乗り込む見城。
「どこに行くのか聞かないのね?」「そっちも、俺が何者か聞かないぜ!」
二人は横浜の海を眺める。女――典子は髪を解き呟く。
「……危険な匂いがするワ。近づいちゃいけない…私の勘が、警告の歌をシャウトしている」
「恐らく……その歌は間違っちゃいない!」
しかし死んでも後悔するよりマシ……少なくとも生きてる実感はある。夕日の中、唇を重ねる二人。
新宿南署では、殺された男について刑事と署長が語る……香港の地下銀行の東京総支配人。奴が殺されたのは何故か? だが、それは警察庁のヤマだ。任せよう。
その夜、シーサイドホテルで過ごす二人――典子は震えながら、ハンドバッグを持ちバスルームに消える。凄まじい形相でシャブの注射針を舌に突き立てる女。
海を眺める見城の背中に、女はすがりつく。やっと巡りあえた男……人生も捨てたものじゃないわね。
だが、見城はキスしたときの変な甘い匂いで、シャブ中毒である事に気づいていた――愕然とする典子。
翌日、岸壁にたたずむ典子の背後に迫る――地下銀行の暗殺者。見城はその姿に気づくが、典子の腹にナイフが突き立てられる。マグナムを肩に受けながら逃げる犯人。
典子は見城の腕の中で呻く。自分はもう既に死んでいた……地下銀行の一員でシャブ中。「あ……あなた刑事でしょう?」死んだ男からのキー目当てだけではない、自分は見城のために生まれてきた女だと思った……。彼のキーと自分のを合わせたら、地下銀行の摘発が……。もう一度シャブが打ちたかった、と言い残し絶命する。
“青ざめたバラの大輪…それが典子ッ……お前だった!!
しかし、その棘を自分に刺すとは……俺はまた……独りぼっちになっちまった”
(続く)