マニア様がキテる――「メガロ刑事」(9/10)

「さ、三年間も潜入して、綿引逮捕を……目前にしながら……」

第13話「狼たちの熱帯夜」
警察庁――広域暴力団・H会壊滅作戦の会議が行われている。幹部の一人が言う。万一失敗しても、その潜入刑事の身分の保証は出来ん! 江本は答える。そのために日頃からメガロ刑事として教育しております。
相手が広域暴力団でも、警察に対する市民の反応は以前冷たい。しかし今をおいてH会壊滅のチャンスは無いだろう……。江本警視正は見城刑事を潜入させろ! 他にもう一人潜入した刑事がいるが、横の連絡は必要ないだろう――。
見城はH会の本拠がある港町へ向かうが、折しも組事務所のビル前でチンピラが射殺され犯人は逃走。その場に居合わせた見城は犯人と間違われ乱闘になる。話してわかる連中ではない、とマグナムを抜き「M連合の鉄砲玉とでも思ってんのかよ!?」組員の一人を盾にして事務所へ上がるが、踏み込んだところで銃口に囲まれる。
そこに会長の情婦が、イングラムSMGを構えて現れる。度胸だけは買ってあげる。M連合の狙いはだれ!? 綿引会長……?
見城はあくまで、銃の腕を売り込みに来ただけだ、チンピラを撃ったのも俺じゃねえ、とマグナムを組員に渡す。「硝煙のにおいはないはずだッ!」銃口を嗅いで納得する組員――油断した一瞬をつき、組員達を叩き伏せながら情婦につっこんでいく見城。身をかわしイングラムを向ける女だが、「突っ込まれるのが鉛の玉じゃ、あまりゾッとしねえだろうな!」マグナムを取り返した見城は、女のスカートの中に突っ込んでいた。――腕を買う気になったか? なあ……。
遂に姿を現した会長・綿引。「その腕、いくらなら売る!?」指を3本出した見城に300万を出すが、単位が一つ違うと一蹴される会長。M連合はH会から独立した上、あんたらを叩き潰し全国制覇を狙っている。幹部以下全員火の玉だ。
三千万もあれば鉄砲玉を一部隊送り込める! と拒否された見城はその場を去り、M連合のアジトであるラブホへ向かうと、怪気炎をあげる幹部達に手荒く自分を売り込む。
――そのころ、会長と情婦は寝室で戯れながら、今後の方針を語り合っていた。「うむ…やはり荒療治は必要じゃろうな」「当然ですワ」日本中の注目する抗争、会長の権力を奪おうとした連中を叩き潰すべし……そこに電話。「何イッ、明日にでもなぐり込み!?」全面戦争だ! といきりたつ綿引に女は「陣頭指揮に立って下さい! 会長の直接指揮でこそ日本全国に威令が届くのですからッ!!」と叫ぶ。躊躇する会長に、命に代えても私が護る、と女は銃を握る。「よしッ、支度せえッ!!」――イングラム片手にニヤリとする女。
だが……その時すでに、見城がついたM連合がビルを包囲しつつあった。「見城とやら………この仕事がうまくいったら、かなりの実入りだぜ。よくこんな作戦を考えついたな」「度胸があるかなしかだけです」直接M連合がなぐり込むとなれば会長も穴倉から出るはず!
ビルの地下駐車場、戦闘服に身を包んだH会の組員達が集結する……。やはり戦闘服姿の女に護られた会長が姿を現したとき、M連合が発砲した! 壮絶な銃撃戦の開始だ! 双方次々と倒れる中、怯える会長を連れて螺旋階段を上る女。その上に陣取っていた見城。
「逃がしやしねえぞ、綿引ッ!」イングラムを向ける女に、マグナムが火を噴く! ――階段を落下する二人。駆けつける警官隊。
瀕死の女は呟く……これでH会もM連合も相打ちで終わりよ。ハッとする見城。
「よ、吉木杏子巡査……殉職……か」
暴力団組長の情婦に身をやつしながら、任務に命を賭けた潜入刑事は息絶えた――見城は彼女を敬礼で見送った。
(続く)