保毛尾田保毛男の記憶

……というのが、実質的に、無い。いやまあ皆無でもないのだけど。
そもそもが、私にとって当時としても好感度に乏しかったはずだが。


保毛尾田保毛男が、話題になっている。
画像を見て、「あー、そんなの、いたなあ」と、なんとなく記憶の片隅から甦ってきたのだが。


世代的には「とんねるずのみなさんのおかげです」はストライクなはずなのだが、メジャーに背を向ける傾向は昔からで、周囲が「ひょうきん族」を見てる頃も「全員集合」と続く「加トケン」を支持していたくらいなので――。


全く見た事が無いわけではなく、何度かチラチラ見て「クラスメートのやってる馬鹿っぽいモノマネは、これか」とある程度理解できる(と思う)程度には知ってたと思うけれど、端的に言えば、当時「自分の好きなムード」では無かったはずだ――「来週も見よう♪」と思うほどには。


恐らくは子供ながらに「円熟の芸」というかオールドスクールなものに惹かれる傾向もあったのだろう。
(……オールドスクール?)
ドリフターズ関連は時代の新しいネタを入れつつ、下品であっても「大真面目に馬鹿をやる」というのがひしひしと伝わってくる――子供時代にそこまで意識してたかどうかはともかく――が、少なくとも当時のとんねるずに、そこまで関心が持てなかった(惹かれるかどうか以前に)のだ。


ただ、"ホモマン"は、はっきり見た記憶がある。
「キミ、はじめて?」
……あのメイクは、確かにインパクト強くて印象に残るのだけど、好感を持てたかというと、ノーだ。そしてコント自体が面白いとは思えなかったんだよ。バットマン」のパロであのネーミングも安直すぎる。


問題は「ネタキャラだろ?」というには、保毛尾田のモノマネをするクラスメートってのは、私にとってはそんな絡み方されても鬱陶しいというか、ぶっちゃけ不快だったんだよ。お互いゲイでないというのはさておき、相手のイヤガラセの意図は明白であったし。


キャラクター造形的に、たとえば志村けんの"変なおじさん"も大概気持ち悪いとは思うが、嫌悪感よりも「ハハハ、バカやってらぁ」と素直に――少なくとも(当時としても)現実にあんなあっけらかんとした変質者はいないだろう――笑って流せるところはあった、様な気がする。

対して、ホモマンを見る限りでも、保毛尾田保毛男のキャラクター造形にあたっては当時としても「意図的な気持ち悪さ」を押し出してたんだろう……という気がする。
そして、当時人気絶頂の番組において「ホモとはこういうものだ」というイメージが示されたら(無論「そーゆーネタだろ」という割り切りは視聴者にある程度あったにせよ)、
そりゃ、ゲイに対する好感度は下がりこそすれ上がるとは思えない。珍獣扱いというところか。

ゲイにとっては自分たちの大切な生き方を笑いものにされて嬉しいはずもない。「そんな意図は無かった」と言われたとしても、誰が信じるだろうか?
(保毛尾田保毛男の肯定派にしても「同性愛者への理解を深めるためのキャラ造形であって〜」なんて説明されたとしても信じないだろう?)

表現の自由を侵す(侵される)事には私としても断じて反対なわけだが、「何でこれが楽しめないの?」と強制されるのもまた、まっぴらである。


実際のところ、LGBTに対して自分自身理解が深いともいえない訳だけれど、今回の騒動における保毛尾田とフジへの批判意見をざっと見る限りでは、彼らの懸念は至極まっとうに感じる。
同時に「面白ければそれでいいじゃん!」という意見も判る。
けれど――100人中99人が面白いと言っているものに対して「面白くない」と感じている一人に対して「ノリ悪ぃ」と非難し嘲笑する様な事もしたくないワケだ。