「狼たちの午後」

お題「最近見た映画」

 

今日見ないともうチャンスが無いので、「午前十時の映画祭」で

狼たちの午後

を見てきた。

 


Dog Day Afternoon Trailer

 

予備知識としては、

アル・パチーノ主演。ゲイの恋人の●●●●手術(あえて伏せ字)のため銀行襲撃した犯人の、実際の強盗事件に基づいた作品で、ストックホルム症候群が描かれた」

くらいで。

 

 

名作の誉れ高いし、まあこのチャンスに見ておくべきだろうと勇んで出かける。

 

見るからに暑っ苦しい猛暑のマンハッタン、ひそやかーに三人組の強盗が閉店間際の銀行に入店。

デコの広いサル(カザール)が、電話中の支店長に近づき、ブリーフケースから銃身を短くしたS&W・M76サブマシンガンを出す。

他の行員はまだ気づかない。ビビリ入った若いロビーをなだめながら、ソニー(パチーノ)はプレゼントっぽいリボンでくくった長い箱をもってカウンターに。

守衛も出納係の女性も不審に思わないのか? こんな長い箱に入ってるなんて、ショットガンと相場が決まってるだろう?

……ライフルでした。ゴメン。しかしリボンが絡んだのかいまいちサッと出せずモタモタと。Mini14? いや、M1カービンで15連マガジン・金属ハンドガードがついてる。全体的にきれいなので戦後の民間向けモデルだろうか?

ビビリ入ったロビーは結局逃げ出してしまうが(「銃と車のカギおいてけ」「オレどォやって帰ンの?」「地下鉄乗れよ!」)、いよいよ大金を掴もうとするソニーとサル。

「オレは銀行にいたから詳しいんだ! この袋にカネを入れろ!」と、ペラペラの大きなビニール袋(というか薄緑色のゴミ袋か?)を女性行員に放ってよこす。

だが金庫の全額を入れてもペシャンコの袋。

「……これだけです」(涙)

その時、金庫には1.100ドルぽっちしかなく、カウンターにも微々たる程度。「封のされた札はクソだ!」

そんな事をしている間に――電話。

モレッティ部長刑事だ、お前たちは完全に包囲されている!」

ニューヨーク市警に包囲され、逃げるチャンスを失ったソニーとサル。

かくして、長く熱い午後の籠城戦が始まったのである。

 

単独犯であったら、ああまでキツい事にはならなかったろうナァ、とは思うが、

 

そう、単独犯だったらソニーはとっくに投降するか射殺されるか、だったが、

 

 

サルという相棒の融通の利かなさ(ずっとネクタイすら緩めない)が、どんどんややこしいことになっていく。

女性である妻アンジーと子供たち、と、今でいう性同一性障害の――もう一人の妻レオン(肉体的には男)。現場の齟齬、前年(1971年)のアッティカ刑務所の暴動による法執行官への不信。

アッティカじゃ42人も死んだぞ! 警察は見境なしだ!」

「俺たちを殺したくてうずうずしてるんだろう!」

 

結末については、当時どうにもならなかったのだろう。

 

ともかくも、1970年代アメリカの閉塞感というか、60年代の公民権運動の変革というか、バッドエンドへ向かって突っ走るそう快感がたまらなかったのである。