あんた人間じゃない! 殺人機械よ!

この一か月ほど、「ワイルド7」「ウッズマン」のキーワードでここに来られる方が多い。
そして、悪名高きタイトーの飛葉モデルを見てガッカリされる方が多いのではないかと思うのだが。

劇場版ワイルド7


結論から言うと、
すげえ面白かった。とりあえず見ろ!

で、不安は吹き飛んだが
不満は残った。


冒頭の強盗犯グループを退治するシーンでまず引き込まれる。そして謎の暗殺者。
徐々に明らかになる黒幕と犯行の背景。
そしてラストに向けて一気に突っ走る!

現代にワイルドの物語をよみがえらせた、という点では、これでいい。
基本的なストーリーやアクション、キャスティング自体に不満はない、特に草波はハマリすぎだろう。

だがしかーし、
細かいところにツッコミどころが多いというか、
「120点つけたいんだけど不満があるから80点な!」
というか。……いやほんとに、もっとやりようはあったろう、という部分が。

まず、瑛太演じる飛葉はちゃんと現代流の飛葉大陸だった。
ただ……悪党相手に、ワイルドの飛葉ならこうするね! という部分は外してはいないと思うのだけど、
飛葉ではあるが飛葉ちゃんではない。
と思えるのだ。

基本的に飛葉ちゃんはガキ大将だが、メンバーから「弟みたいな気がすっからさ!」とか言われつつ信頼と尊敬を集め、そして愛されている。瑛太演じる飛葉は……というか、全員の関係がドライすぎるぞ、おい。イコやシノベエの出番を作る余地がないのは判るが、飛葉ちゃんがいい意味でガキガキしく軽口叩いてみせる相手が実質いない。飛葉が飛葉ちゃんたりえるガキっぽさを発露させることができなかった、あるいはしなかった、と見るべきか。
夜食のウドンづくりは飛葉ちゃんの大事なキーワードだし、どっかで入れてほしかったなぁ……。

ユキの存在がちょっと中途半端だった感も否めない。エンディングはもちろんアレで当然だが、原作の「コンクリートゲリラ」編における動機→殺人術ステップアップ→思わぬ挫折、という過程が一応描かれてるのに、映画ではどうやってスキル磨いたか判らないのと、途中退場が早すぎるのが物足りない。クライマックスのオチにユキ不在ってなどうなんだ。
加えて申さば、飛葉がユキに惹かれてくってのはアリなのか?

「バッジちらっ」もない。アレで一般警官がギョッ、という印籠的なシーンも象徴的だろうに。……都市伝説的なイメージ出すのに不要だったのかもしれないが。

SATとの銃撃戦も、。「標的以外殺すな」の命令なのにワイルドはガンガン撃ちまくってるが、ロケット弾やグレネードで退避してる以外にSAT側の描写が殆どない。
ここはやはり、
「ギャッ、足をやられた」
「腕を撃たれたっ」
「ボディアーマーにまとめて弾くらった、アバラがっ」
「ヘルメットを撃たれて脳震盪にっ」
「顔を撃たれたら、二度と朝日がおがめなかったぜ」
「おかしい、重傷者だらけだが死者が出とらんぞ」
といった映画的なウソ「急所の外し方」をやってほしかった……そうすれば、ただ撃ちまくってるだけ、という印象もなく「少ない弾でも確実に倒すワイルド」というイメージもついたろうに。というかココが一番の難点ではないか?

オヤブンがバイソンのシリンダーを、手首のスナップで振って閉じるのはどうか、と思うが――まあ、これは原作がそもそもそうだからなあ。78年頃にイーチがCHPのレポートするまで“振りこみ”がNGだなんて誰も知らなかったろうし。


……ふと気が付いたが、もしかしてセカイが息絶えるシーンは、原作の「灰になるまで」編のヤクザのそれのオマージュではないか?