マニア様がキテる――「白熱(デッドヒート)」(3/4)

名古屋ナンバー・ゴールドメタリックの
スカイラインハードトップGT
通称『ファントム』へ
拝借したものをぜひお返ししたく
×月××日午前五時 国道一七号線
苗場国際スキー場脇で待つ

卓と島本は信濃川の河口に、150メートルの距離をとって対峙した。壊れても惜しくないボロ車を卓の金で用意しての――ゲームというより、既にデスマッチだ。
このチキン・ランを見守るのは“シシリアン”のメンバーと、HNKの須藤と相方のカメラマン……。島本の女がフラッグを振る、“スタート!”
誰もが緊張の只中にいる――みるみるうちに迫る互いの車。先に回避したのは島本だった。
だが、続いて回避した卓の車は、玉砂利でテールが流れ大きくスリップ、島本の車に激突しコースアウト、砂利の山へ突っ込んで止まった。――やっと停止した車からよろけ出る島本は、あまりの恐怖に激しく嘔吐する。クラッシュした車内で呟く卓。「ファ……ファントムはもらったぜ……………」意識を失う。
数日後、入院中の卓のもとへ須藤が現れる。卓は彼に問う。
「あんた本当にHNKの人間かい?」
HNKのような堅いところが、世間で言う俺たち“暴走族”の番組を作らせるのか? もしファントムと出あったら、より激しい修羅場になるだろう。警察沙汰になったら叩かれるのはあんたらではないか?
須藤は言う。“週末に辞表を出してきた”――前からそのつもりだった。今回上層部から中止せよとクレームがついたが、一度始めた番組を放棄する事はできない。だからフリーの立場で番組をつくる。
(後で追加)