マニア様がキテる――「白熱(デッドヒート)」(3/4)

「なぜ、彼は走るか!
何故、速い車に憧れるのか!
彼にとってスピードとは何か!」

ファントムが出没した新潟へ向かう直前、金沢のホテルで沙智からの電話を受ける――金沢での暴走族騒ぎをニュースで知った彼女は、卓がそこにいると読んで金沢じゅうの宿を調べたのだ。

うっかり新潟行きを話してしまった卓だが、すぐにあなたを追いかけるつもりはない――しかし必ず私の手に取り戻す、と沙智は不敵に笑い電話を切った。

新潟のホテルに宿泊した卓は、HNK本部社会番組班のディレクター、須藤竜介の来訪をうける。
男は言う、「おたくがなぜ旅に出たか、何を追いかけているのか…………」それをドキュメントとして撮りたい。
「俺が今やろうとしていることを、あんたが知るわけがない!」と驚愕する卓に、須藤は続ける。
「元田沙智という女性をご存知でしょう?」
彼女からの“企画の売り込み”で、自分が考えていたテーマ、世間で言う“暴走族”――車にとりつかれた一人の若者の内面を掘り下げる、という内容、そのイメージが明確になった。そして彼女の“新潟の、たぶん一流の宿”という助言で卓をつかまえる事ができた。
だが、なぜ沙智はおたくに番組を作らせようと? といぶかしむ卓。須藤もその理由は説明されなかった。
“ただ彼女は、おたくが目的を果たせないのではないかと心配していた。……あるいは我々の力を期待したのかも”全国組織であるHNKのネットワークで情報収集すれば、“敵”を探せる確率は、卓が一人でいきあたりばったりに探すより高い。
「もう一つ、新聞の案内欄に広告を出すんです」「!」

原作に無い描写。ただのキーホルダーでこの演出!
僕もあなたの願いが成就する事を祈っている、と須藤は言う。「つまり、いい番組をつくるためにだな」

恐ろしくいい顔の須藤さん。
宅は申し出を了承する。須藤は沙智に連絡を取るが、彼女は弘を巻き込み何かをたくらんでいた……。

須藤は新潟県下最大のグループ“シシリアン”のリーダー、島本とわたりをつけ、卓とひきあわせる。
卓を自分等と同類だとふんだ島本。横浜から俺たちに何の用だ? ――卓の説明を聞くうちに、島本とメンバー達の顔色が変わっていく。
「そいつの名はファントム、違うか!?」――島本もまた、ファントムの挑発に乗って事故り、ひたいに大きな傷をつくった。この傷が残っているうちに、奴を病院送りにする……。グループ総動員で奴を追っているが、見つかってもあんたに教えるつもりはない、奴は俺の獲物だ!
いきりたつ島本に、卓は提案する。
ファントムへの挑戦権をかけた“チキン・ラン”……互いの車めざして突っ走る、むろんそのままいけば正面衝突だ。先にハンドル切って逃げたほうが負け――「いちばん白黒がはっきりして面白いと思うがな」

(続く)