何気に思い出した赤塚不二夫

時々「銀座鉄道999999」を思い出す。

リアルタイムで読んだ世代ではなく、確か十数年前(まだ二十世紀であったろうか)に古本で買った「漫画奇想天外」か何かで読んだのだが。

メーテル似の美人ホステスが、
「わたしの名前はメートルよ、どんどん飲んでメートルをお上げになって!」
とか、未だに忘れられないのだが。
……メートルをあげる、なんて言い回し、今時通じないだろうなあ。

私の子供の頃は「天才バカボン」の再放送もあったので、かろうじて
「♪青空のウメボシに〜」
とか
「♪四十一歳の春だから〜」
とか耳にしている。

で、本放送でリバイバル新作の「おそ松くん」や「ひみつのアッコちゃん」を見ている(「平成天才バカボン」はあまり見た記憶がない……)のだが――「おそ松くん」はチビ太主演の名作パロディ話のが面白く印象に残ってる。「アンタッチャブル」とか「シェーン」とか、O・ヘンリーの金庫破り話(イヤミ刑事が「私はあなたを知らない」と涙を流して去るのだ)とか。

まあ当時は「コミックボンボン」を読んでたのだが――単なるギャグというには後味悪い作品があった。
バカボン」の新作なのだが……。

タバコを吸ってるスーツ姿のオッサン、だが。
「ママー! ママー! タバタバちゃんの灰が落ちてるよぉー!」
灰皿もって現れたママ、といってもどう見てもお婆さん。
「あまったれ屋さんねえ!」ニコニコ。

「ママー、ぼくにおよめさんもらって」
「ケン坊にはまだ早いわよ」
「だってぼく、もう四十三だよ」(←記憶違いかも知らんが二十代や三十代ではない)

おかあさんといっしょ」(だったと思う)見て一緒に体操。
ママ(笑)が出してくれたリンゴを「これなあに?」
ママはリンゴを剥いて切って差し出し、
「ケン坊は切ったリンゴしか見たことがなかったわねえ」
「アフーン、おリンゴちゃんがお口からこぼれるう」

……いやホントにこういう内容だったんだよ。

で、ママが買い物に出かけるのだが。
「おみやげにタバコちゃん買ってきてね」
「ママが帰ってくるまで、お外に出ちゃだめよ」
「どうして?」
「こわーいオオカミがでて、ケン坊を食べちゃうわよ!」
「うわーっ! ぼくぜったいおそとにでないよ!」

ホントにこういうカンジだったんだよ。

ところが何の脈絡もなくぶしつけだが、バカボンのパパが妙齢……の? 女性と共に登場。
「きみに、おかみさんをつれてきたのだ」
「ウフーン」
オオカミさんにだまされないぞ!」
オオカミさんじゃない、きみのおヨメさんなのだ!」
「おヨメさんならあけてもいいよ!」

で、突如お見合い開始。
「私は愛なくして性の問題はありえないと思いますが、あなたはどうですか?」
「あたしは性なくして愛の問題はありえないと考えます」
「サイフをなくして交番の問題へいくのだ」

そこへ帰ってきたママ仰天。交番へすっ飛んで行き、目玉のおまわりさんに「ドロボーです!」
「なにっ」
「うちのケン坊をとったんです!」

バカボンのパパ、あわてず「子供は独り立ちして家庭を持つのです!」とか、バカ田大学仕込みの学識でとりあえずその場を鎮めるのだが――数日後、様子を見に行くと。
ママ「ほーら、おイモの怪獣ちゃんつきゴハンよ!」
ヨメ「ケン坊、こっちは旗がたってるわよ!」
「うわーん、どっちがいいかわかんないよう!」

バカボンのパパはママの膝枕で、
「ママ、わしもおヨメさんがほしいのだ!」
「なにいってるの!」

枠外で「よく考えたら、わしのおヨメさんはママのことなのだ」とオチはついてるのだが、なんかどうにもキツイ話では、ある。