今週のお題「オススメの気分転換法」――ランチア・イプシロンで思わぬ気分転換。

たまには、いつもと違うことをする。
いつもと違うことと言っても、他のクルマに乗ってみる、なんてのは気分転換法としてはハードル高いかも知れない。まして今回のは受動的な機会だったわけだけど――。

ランチア・Y(イプシロン)。
以前から一度乗ってみたいクルマだったが、まさかこんなチャンスがあるとは!

この車を知ったきっかけは、確かアルファ/フィアット/ランチアのムックだ。まだ147デビュー前で、156や二代目プントはバリバリ最新鋭機だし155/145も現役、デルタもまだまだ熱いという時期の本だった。


で、青メタのボディに青いOZスーパーツーリズモ(だったと思う)という組合せのイプシロンが載っていて、そのいでたちがなんだか鮮やかで。
……ハッキリ言ってヘンなデザインだなぁ、と思いつつ、どうにも忘れる事ができなかった。



後にランチアのムーザなど、実車を見る機会を得てからは、欲しいとまでは思わなかったが
「あーゆーの選ぶセンスって、いいな、すごいな」
と、そのオーナーに憧れたものである。
更には159購入と前後して、Eオートのヤードに代車だかストックだかで新旧のイプシロンやムーザが置いてあって、そういう並行輸入でしか入ってきてないコダワリの“小さな高級車”というラインが「ああいうのセカンドカーにある生活って、いいな」と、しみじみ思ったわけだ。

そして、実際に乗ってみたわけだが……うん、確かに15年落ち16万キロオーバーで、外装もあちこちキズやヘコミがある。
内装だって、やはりボルドーレッドと思しきアルカンタラ(エクセーヌ)はいささか退色気味で毛羽立ちもあるし、樹脂パーツも経年劣化が目立つ。
富士重工CVTも電磁クラッチが消耗してるのか? なんかガサガサした感じだ。足回りもショックは恐らく……だ。

けれど、全体的にはゆるゆるまったりしつつ、上品なムードというのは確かに残っていて、いつものアルファ159とはまた違う「小さな貴婦人」エスコートする感覚を大いに楽しめたのだ。

端的に言えば――159がクールビューティーなら、
このイプシロンロリババアだ! パチュリー・ノーレッジ的な。

ジョルジェット・ジウジアーロのデザインによる強面クールビューディーに対し、
エンリコ・フミアのデザインによる、まるで1980年代のSF映画に出てくる小型宇宙艇みたいなフォルム。
同じイタリアンデザインでも、その方向性は全く違う。
……こういうのも、真剣にいいかも。
と、魂を半ばもってかれかけた。

で、159が途端に色褪せちゃうんじゃないかな、と少し不安になったわけだが、それは杞憂だった。
ファブリックのシートに身を沈め、アルミパネルの鈍い輝きと短めのシフトレバー、並んだメーターを見ただけで、
自分はやはり159こそ愛車だ。
と、一瞬で立ち返った。

一泊二日の短い気分転換、またいずれこんな機会もあろうけど、いい体験でございました。
……次はなにかな。パンダとかバルケッタとかだったらうれしいな。