“おそるべき子猫”ケー・イマトゥバ

太平洋上に出現した超空間ゲート、その向こうに存在する異世界“レト・セマーニ”と、ゲートと共に出現した巨大な陸地カリアエナ島。両世界の人類がひしめき合うこの島の、地球側玄関口であるサンテレサ市。セマーニ世界の魔法文明と、地球側の文明が渦巻くこの街を舞台に――“事件”を追う二人。
地球人の刑事と異世界の騎士!

分署の署長として“悪運(バッドラック)ベッキィ”とか、元SASのセクハラ刑事とか出て……こないよな、いくらなんでも。

蓬莱学園短編集「弁天女子寮攻防戦」――映画「ダイハード」に強い影響を受けたであろう表題作だが、
「テロリストに占拠された巨大建造物」
「多数の人質」
「外部から手をこまねいて見るしかないロウ・エンフォースメント連中」
「そして建物の中、単身立ち上がった男」というファクターはともかく……。
テロリストに占拠されたのは「巨大な女子寮」
人質になったのは「多数の女子高生(自警団員含む)」
外部で手をこまねいているのは「巨大な生徒会の公安組織」(SWATまで編成しているが、あっさりヘリを撃墜される)
単身立ち上がったのは「女子寮潜入中の盗撮常習犯であるヘタレ男子生徒」!
盗撮常習犯が、ほとんど私怨で(途中から、人質の事もどうでもよくなった)テロリストを排除していく様は痛快だったし、ラストの自警団長とのやりとりは爽快だった。……と思う。何分にも実家に置いたっきり、ここ何年も読んでないから。
短編集はその後も刊行され、賀東作品も少しずつ増えていき……この中で “ブラザー・オニール”というキャラが生まれた。
ソフトバンクの解説本に掲載された、高野天野(もしかして、現在の高野真之か?)のコミック「WHO DARES WINS」でも“共犯者・賀東招二”として、おそらく脚本担当であろうがクレジットされている。
だが、蓬莱学園関連の展開は、90年代末にはひとまず終了してしまう。そこでしばらく、私は賀東招二という名を忘れていた。
だから……ある日「フルメタル・パニック!」という作品の存在を知った時、大きな驚きと懐かしさを覚えた。 
フルメタ」に関しては、その存在を知った頃は既に一大ムーヴメントとなっていたし、どちらかと言えばマイナー嗜好である私はすぐさま飛びつくことはしなかった。一応、少しずつ文庫を読み始めてはいったけれど……転居に伴い泣く泣く処分してしまった。けれど「ドラグネット・ミラージュ」は手放さなかった、と思う。
 
3年半ほど前になるだろうか、竹書房Z(ゼータ)文庫から“きぬたさとし/原案・賀東招二”名義で発表されたその作品は、確かに賀東招二の趣味全開だなぁ、と言わんばかりの内容だった。 
異世界“レト・セマーニ”と地球の文化が渾然となったサンテレサ市を舞台に、セマーニから誘拐されてきた“妖精”を巡る事件の数々。その捜査にあたる二人。
サンテレサ市警の刑事ケイ・マトバ。国連軍の一員としてセマーニで戦った元兵士にして、囮捜査中に相棒を失ったばかりの男。
ファルバーニ王国の準騎士ティラナ・エクセディリカ。セマーニ世界の貴族にして、誘拐された妖精を追ってきた少女。
出自も思想も立場も違う二人が、対立を重ねながら、共通の敵を追う中で次第に信頼を深めていく……その結末は!
(もうちょっと続く)