今週のお題「夏に聞きたい、怖い話」“バックミラーに映ったものは”

私がまだ四国に住んでいた当時の話だ、確か3〜4年前の初夏だったと思う。

その夜、私はショッピングセンターで買い物して帰る途中、イライラしていた。なにしろこの街はクルマの流れが悪いのだ。当時の愛車アルファ145も、いまひとつその爽快な走りを堪能できなかった。

交差点を右折したと思ったら、またすぐに赤信号だ。
その時、右車線の先頭にいた私は、青になり次第145のアクセルを強めに踏みたくてうずうずしていた。

ふと、視線というか嫌な気配を感じて、バックミラーを見た。

そこに映っていたのは、二人の男の顔。

その二人が乗っていたのは――


パトカー。

ため息をついた私は、青信号になると同時にわざとゆっくりアルファをスタートさせ、ゆるりと左へ車線変更した。
パトカーはしばらく――助手席の警官はこちらをチラチラ見ていた気がする――名残惜しそうに並走していたが、あきらめてそのまま先行していった。