クリスマスのヒル分署

昨日の続きだ、もうちょっと聞いてほしい。


ボビーやワシントンが苦悩している頃、囮捜査担当のベルカー刑事は街角で、サンタの格好をして張り込んでいた。
「ホー、ホー、ホー、メリークリスマース」
そこに近づいてくる生意気そうなガキ。
「おじさん、デカだろ?」
「……あっちいってろ」
結局、子供のせいで張り込みがおじゃんになり、ベルカーは分署まで彼を連行し「公務執行妨害です」エスターハウス主任に引き渡した。
保護者の祖母がやってきて言うには
「娘は彼氏とフロリダに行ってます。私もこの子を可愛がっているんですが……。
どうか鞭打ち室に連れてってやってください」子供たちは昔は悪さをしたが、鞭打ちのおかげで今は市電運転手や牧師になっているんです。
――さすがに1980年代米国にそんなものはないが、祖母と孫の前で主任とフリロ署長が小芝居をする。
「ようし、わしがやろう。お前はまだ子供だから、ちょっとは加減してやる」
「よせよフィル、君は今朝も二人ほど半殺しにしたろう」
そして署長は面通し室(容疑者の背後の壁に、身長の目安が書き込んであるアレ)に少年を連れてきて、少年とじっくり話し合った。


ボビーとレンコは、ボビー父の宿泊先を訪れるが、一足違いで「あんた達、あいつを追ってるのか? 代金を踏み倒して出て行きやがった」
仕方なく宿泊費を立て替えるボビーだが、憤懣やるかたない。

ワシントンは件の酒屋を訪れ、七面鳥を渡しながら夫人に謝罪する。
あくまで事故であり、公式には彼自身が責任を問われることは無いのだが(なにしろ酒屋の主人は、警官であるワシントンに銃を向けたのだ)、どうにも気が晴れないのだ。
婦人は言う。
「今日はクリスマス、みんな楽しそうに来て、たくさんお酒を買ってくれるわ。
私が今夜どうするか判る? クリスマスに相手も無く一人で過ごすのよ。
このままじゃ済まさないわ、あんたと市当局を訴えてやる」

――刑事部屋でワシントンは悄然としながら書類をタイプしている。彼を励まそうとするラルーの言葉も、あまりに軽薄に聞こえる。


ボビーはついに父親を見つけるが、
「お前がなかなか来ないからさ、なあ、親子でクリスマスを――」
「あんたは俺の父親じゃない、ミスター、他人だよ。この街から出て行ってくれ」
「……わかった、だが、わしにバス代を恵んでくれるか」


やがて夕方、みんな仮装して小児病棟へ行く準備にかかるが、ついにワシントンが激発する。
「そのいまいましいクリスマスソングを切れ。
 ラルー、おめえは俺が助けなければとっくにクビになってたんだぞ。
 なのに俺が助けが欲しいときに、おめえの態度は何だ!」
乱闘を始める二人を総出で引きはがし、ヘンリーはワシントンを諭す。
「タフでクールな警官でいるのは難しい、いずれ破綻する。そうなったら家庭も職も失い、38口径で自分の頭を吹き飛ばすことになる。
もっと友人に頼れ」

小児科病棟では、カナダ騎馬警官の仮装をしたハンター警部補とサンタルックの仲間たちが子供たちの前でご挨拶。
(恐らくはホントに小児科病棟でロケしたんじゃないだろうか)
「トナカイの引くソリが来ない? どうしたんだろう?
 耳をすませてごらん、鈴の音が聞こえるだろう――ほら!」
プレゼントを積んだソリとトナカイと本命サンタが現れ、子供たち大喜び。警官たちも笑顔で警察バンで帰途につくのである。

――ところがそこで手配中の暴力犯のクルマと遭遇する。派手にロールさせながら追跡し、路地に追い込んでストップさせ乱闘の末に制圧するが、ルーシーが負傷し病院に送られた。

報告を聞き、指示を出すフリロ署長とカルタノ警部補。そこに電話。
「私はスキーに出発したと言え」フリロはダヴェンポート弁護士とともに出発した。

自宅でスープを温めるベルカー、そこに電話。
「もしもし? ……いえ、番号違いです。……メリー・クリスマス」

病室で目を覚ますルーシー、傍らにはコフィー。

書類をタイプするワシントンに、ラルーは言う。
「お前との友情を失いたくはない」

……メリークリスマス。