「明日があるさ」とくれば。

坂本九のあの曲が時代の名曲だというのは、私は別に異論を唱えないが。


その後の……え、あれってウルフルズ版だったの?


……あのカバーは、正直、自分が色々とメゲてる時期によく流れていたのだが、

元気が出るどころか、当時、一番聴きたくない曲だった。


明日があるのは当然だが、

「明日がよりよい日である」
という希望を持てた時代(であろう、と、後の世代としては推測される)の、
ある意味美しいファンタジーともとれる坂本九のオリジナルはまだしも、


勉強しなおす心の余裕も無く、がんばる理由が自分のためであり家族のためであると判っている人間にとっては、


それなりの規模の会社
(独立起業しようという人材が育ち、海外の支社なりが存在する様な)
に勤めてる人間の視点や意識――無論それゆえの苦労や悩みがあるにせよ――に基づいた歌詞であり、
彼らはそういう苦悩があっても生活基盤はしっかりしてるであろう、というのを念頭に置くと、



現在進行形(当時の)で

「明日が来るのは当然だ、
 もっとひどい明日も来るだろう、
 だが、素晴らしい明日が来る保証はどこにもない」

という心境の人間にとっては、
あの歌詞は、
何の希望にも慰めにも救いにもならないんだよな。





現在、さすがにそこまで――嫌う事はしないが、

けれど、カラオケに誘われたりして、
「一緒に歌おうぜ!」
と誘われたならば、
共感なぞせずに、醒めた心でなげやりに歌うだろう。


……ウルフルズが嫌いなわけでも、青島幸男や中村八大を批判するわけでも、坂本九を必要以上に美化するわけでも無い、念のため。