何気なくそこにあった恐怖

悪夢を見るのはよくあることだが。

両親は今夜不在。
よって私は静岡のマンションで一人、レトルトのカレー食べて(ブロッコリーとゆで卵も入れよう)、ノンアルコールビール飲んでいた。
で、古いVHSの録画をつらつら流してると、昔のボキャ天が入ってて「サンダーバード違うよ」とか「ペア江頭」とかに大笑いしていた。
ゆるゆるまったりな時間。

そこまではいい。


“ピンポン”
心当たりが無い場合、ドアチャイムはいつだって不吉だ――玄関の鍵はかかってる。タナカM29の4in(当然タマの出ないモデルガンだ)を片手に握るのは、一人暮らし時代に身についた習慣だ。.44マグナムのフィーリングはなんとなく安心させるものがある、ワトキンスさん?

だが一人暮らし時代ならいざ知らず、ここでは近所づきあいってものがあるのだ。おとなしくインターホンに出てみれば、同じ階に住む顔見知りのおばさん。
「?」M29を台所に置いて、ドアを開ける。
「ちょっと相談があって……実は夜中に――」玄関先でしばしお話。


今日の未明、チャイムが鳴り響いたので、いったい何かと思ってインターホンで誰何するも返事がない。腹を立てて出てみると、酔った様子の見知らぬ初老の男
「……ここじゃない」
男は詫びもせず、その場を立ち去っていった。

以前にも、夜中にドアをガンガン叩かれるなどあったらしく、いささか不安だという。それは判る。
基本的に防犯はしっかりしたマンションだから、却って不安だ。
私も他人事ではない。

チェーンよし、ドアロックよし、窓の施錠よし。
枕元にM29の4in(気分だ、ワトキンスさん)と携帯、よし。

オチはない、よし。