今週のお題  心に残る映画「真夜中の刑事」

記憶に残る映画と、
心に残る映画。
この二つは似て非なるものなのかな……。


ともかく、
ブルース・ブラザースは間違いなく、心にも記憶にも残る映画なのだが……。

色々あるけれど、ここは
「真夜中の刑事」“Police Python 357”
1976年フランス映画 監督:アラン・コルノー
主演:イヴ・モンタン

だろう。

モンタン扮するのはオルレアン警察のベテラン刑事マルク・フェロー。
係累もなく、周囲とも必要以上の付き合いをしない孤独な男。彼が心を傾けるのは、原題にもなっている愛用の拳銃コルト・パイソン.357のみ。
ある夜、写真館のショーウィンドゥに飾られていた写真を見たフェローは驚愕する。つい先日、窃盗事件の現場で犯人にパイソンの狙いをつけた瞬間ではないか!
その写真を撮った女、シルビアに惹かれていくフェロー、やがて恋に落ちていく二人だが、彼女には別の愛人がいた。その愛人とは……。
そしてシルビアは、愛人との別れ話のもつれから殺されてしまう。捜査に乗り出すフェローだが、愛した女を殺された怒りや悲しみを露わにすることは出来なかった。
生前の彼女と口論していた大柄な男の存在、現場付近で目撃された男の落とした手袋と靴跡――。署長も部下も“その男が犯人だ”と言う、だがそれらはすべて、フェローの事を指し示していた。
犯人を追いながら、自分の痕跡を消していくフェロー。思い出の品を焼却し、硫酸で自ら顔を焼き目撃者から逃れようとする。
まるで出口の見えない迷路に迷い込んだ刑事の姿――。

パイソンの蒼く冷たい輝きと渇いた銃声、愛した女が死んだ嘆きを隠さねばならぬ男の哀感。
愛した女を手にかけた男と、その妻の姿。
全てを知ってしまった部下の困惑。
朝日の中、すべてが晒されたのか、それとも。