最后の標的(2/4)

ジーパンが何故.22口径を持つに至ったか? 「最后の標的」というエピソードがそれだ。
冬のある日、公園で若者達が乱闘騒ぎを繰り広げていた。
現場に急行したジーパンとゴリさん。ジーパンは一人の少女を取り押さえるが、彼女は叫んだ――「人殺し!」。
ジーパンは少し前の事件で、少女の兄を射殺していたのだ。(このエピソードは未見だが、「海を撃て」以降)
刑事部屋で大いに落ち込むジーパン。そこにやってきたボスが「射撃場に新しい標的が入ったぞ」と、ゴリとジーパンに射撃練習を促した。
ニコニコ顔のゴリさんと共に、嫌々射撃場に向かう。そこにいたのはかつての七曲署捜査一係長、根来刑事。足を負傷した現在は本庁庶務課勤務で、今日で退職だという彼は、最後の射撃練習に来ていたのだ。
射撃の名手であるゴリさんに訊ねる。
「根来さんって、射撃うまいンすか?」
「ばーか、根来さんは警視庁じゃ“拳銃の神様”って言われた人だ。ま、お前とじゃヘーシンク(東京五輪の柔道金メダリスト)と赤ン坊ってとこだな
大いにくさるジーパン。

数日後、七曲署管内で殺人事件が発生した。被害者はかつて汚職事件に関わったと目された男だ。
「犯行に使われたのは、ボスのと同型のルガーP08.です」
「ルガーは命中度は高いがクセがあって使いにくい。プロの仕業だな」自分のルガーを眺める藤堂ボス。
浮かぬ顔でシンコからハイパトを受け取り、ジーパンは街へ出て捜査を開始した。やがて偶然、病院の前で根来と再会する。
「どうだ、最近コレ(射撃練習)やっとるか?」
「忙しくてなかなか……でも銃なんか使わなくたって」
「得意の空手がある、か?」
その瞬間、ジーパンの懐のハイパトは根来の手にあり、ジーパンの腹に向けられていた。
「この間合いでは、空手も役にたたんぞ! ――その気になったら、いつでも練習につきあってやる」
足を引きずりながら去る根来。

やがて、名の知れたルガー使いの殺し屋が、管内に潜伏しているという情報を得た。その後を追うジーパン達だが、尾行していた彼らの目前で男は射殺された。使われたのは、やはり先の事件と同じルガーだった。自分たちが追うのは、恐るべき技量の暗殺者だ!

ジーパンは遂に意を決した。出勤前の早朝、根来から特訓を受けることにしたのだ。
「退職したオレが撃つわけにはいかん、お前だけだ」
「銃を見せてみろ……冷え切ってるな、あたためてやるんだ」
「拳銃は当たらんもんだという迷信があるが、それは狙ってないからだ。狙って撃てば必ず当たる!」
「心臓を狙え! 多少狙いがそれても、体のどこかには当たる!」
ジーパンの腕は確かに上がっていった。しかし頑なに肩を狙っている。
「柴田! なぜ心臓を狙わん!」
「オレはアンタとは違う!」
「……勝手にしろ」苦笑を浮かべる根来。

(続く)